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国が崩壊するとき... 『アンダーグラウンド』

2012.01.15.Sun.00:16
『アンダーグラウンド』

英題: Underground
製作年: 1995 年
製作国: フランス=ドイツ=ハンガリー
監督: エミール・クストリッツァ
出演: ミキ・マノイロヴィッチ、ラザル・リストフスキー、ミリャナ・ヤコヴィッチ、エルンスト・ストッツナー、スラヴコ・スティマツ、スルジャン・トドロヴィッチ

underground_poster

[あらすじ] (参照: goo 映画Wikipedia
<第一章> 1941 年、ナチス侵攻下のベオグラード。共産党員のマルコ (ミキ・マノイロヴィッチ) は元電気工のクロ (ラザル・リストフスキー) を党に入党させ、頭角を現わしていく。ベオグラードはナチスの本格的な爆撃を受け、マルコは弟・イヴァンや避難民たちを屋敷の地下室(アンダーグラウンド)に退避させ武器の密造を行わせる。マルコとクロの両者が恋焦がれる女優ナタリア (ミリャナ・ヤコヴィッチ) は、ナチス将校・フランツの恋人となるが、クロはナタリアをさらう。クロとの結婚式の最中にフランツ率いるナチス部隊の襲撃を受け、ナタリアを奪われる。クロは逮捕されるがマルコの奇策によりナタリアを奪還。しかし、クロは大怪我をし地下室の住人となる。1945 年、終戦。チトーを中心に共産主義のユーゴスラヴィア連邦が成立。

<第二章> マルコは、パルチザンの英雄としてチトー大統領の側近となり、ナタリアを自分の妻として迎える。しかし地下室の住人には 「まだナチとの戦争は続いている」 と嘘をつき通し、武器を製造させ、利益を得ていた。クロの息子ヨヴァン(スルジャン・トドロヴィチ)の結婚式の日、喜びに乱舞し、酔ううちに、密造戦車から誤って砲弾を発射され、地下は大混乱。その混乱に乗じて外に出たクロとヨヴァンは、何とクロを英雄として奉ったプロパガンダ映画の撮影現場に遭遇。事態が把握できないクロは、フランツ役の俳優を射殺。混乱のさなか、ヨヴァンはドナウ河で溺れてしまう。マルコは、自らが作り上げた虚構の地下世界を爆破して失踪、政界からも姿を消す。そしてチトー大統領の死により、ユーゴはまた混乱に包まれていく。

<第三章> マルコの失踪でチトー政権は急速に人望を失い、30 年後にユーゴスラヴィアは崩壊した。イヴァンは兄マルコが悪名高い武器商人だと知らされ、故国に帰還。ユーゴスラヴィアの国はすでになく、そこは激しい内戦の大地と化していた。内戦の中、マルコとナタリアは武器商人として軍事勢力と交渉を行っていた。その現場を見てしまったイヴァンは車椅子のマルコを激しく問い詰め、杖で殴打し殺してしまう。兄殺しの罪を償うため、イヴァンは教会の鐘の綱に自分の首をくくりつけ自殺する。火をつけられ燃え上がるマルコとナタリアの亡骸を見つけて嘆くクロ。

音楽がいつまでも楽しそうに鳴り響く中、宴の席はやがて大地を離れ、ドナウ河を漂っていく。

1995 年 カンヌ国際映画祭 パルム・ドール受賞


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


エミール・クストリッツァ監督が祖国ボスニア・ヘルツェコヴィナ(旧ユーゴスラヴィア)の50年に渡る悲劇の歴史をブラックなファンタジーとして再構築したこの映画は、国が崩壊してしまった現実を前にして愛と狂気で生き抜いた人たちの姿を描いた映画史に残る一大傑作。(作品資料より)

この作品をひとことで言うなら、この説明文を引用するのが適切だと思う。

本作は三部仕立てになっていて、戦争に始まり、戦争に終わる構成で、ユーゴスラヴィアの現代史を叙事詩のように描いている。それも、そんな遠い昔の話ではなく、第二次世界大戦から、チトー大統領によるユーゴスラヴィア連邦の成立、そして、クロアチア紛争、ボスニア・ヘルツゴビナ紛争、コソボ紛争を経た連邦の崩壊までの比較的最近に起こった現代史。民族紛争による荒廃した焦土の映像などは、まだ記憶に新しい。

冒頭は、ブラスバンドが騒々しく響き、一体何が始まるのだろうかと、少しいぶかしげに思っていると、登場する人々はまるで旅芸人一座のように見えてくる。ひとりひとりをじっくり見据える暇もないまま、次々と派手な舞台仕掛けが露わになり、その展開の激しさには圧倒された。

第二次世界大戦はまだ終わっていないと信じるがまま、地下世界に閉じ込められたクロをはじめとする人々。虚構の地下世界を作り上げ、地上で立身出世を果たすマルコ。マルコの欺瞞に付き合うナタリア。この 3 人の人間模様が主軸となっている。

登場人物のキャラクターや、数々の出来事には、メタファ、アイロニー、ブラックユーモアが詰め込まれているようで、歴史的、社会的背景知識の乏しいワタシに理解できるところは知れていると思った。国の崩壊という悲劇が、喜劇にも似た人間模様を織り交ぜて描かれているが、悲劇と喜劇はどうにも融合しえない、そのぎこちなさを敢えて押し出しているように見えるが、微妙なバランスの上に物語が成り立っている。ふざけているのか、大真面目なのか、各キャラクターの本心も、見えるようで、なかなか見えてこない。

地下世界に住む人々は、旅芸人一座のように多様でありながら、空間、時間、衣食住、イデオロギー、あらゆるものを共有している。しかし、マルコの嘘によって成り立っていただけの脆さも抱えていて、彼らがひとたび地上に出たとき、バラバラに散っていくさまは、まるで、ユーゴスラヴィアの崩壊そのものを見るようだ。彼らが根を下ろすべき土地はあるのか、それはどこにあるのかと、問いかけているようでもあった。

後に「七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」といわれるほどの多様性を内包していたユーゴスラヴィア。本作を見ると、否が応でも国や民族とは何かといういう概念に押しつぶされそうになる。

ラストシーンで、ドナウ川の岸辺にあった土地が切り離され流されていく...あの土地から聞こえてきた歓びや哀しみの声が、ブラスバンドの響きとともに遠ざかっていくさまは、とてももの哀しく感じられた。



◆ Pros
- 長尺を感じさせないテンポのよい展開。
- 歴史叙事詩と人間模様の融和。
- 魅力的なキャスト。
- 多彩なカメラワークと民俗色豊かなジプシー音楽。

◆ Cons
- 喜劇と悲劇の微妙なバランスに難あり?
- 要背景知識。



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