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精神と現実のバランス劇... 『こわれゆく女』

2012.07.18.Wed.20:31
ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ
『こわれゆく女』

原題:A Woman Under the Influence
製作年: 1975 年
製作国: アメリカ
監督: ジョン・カサヴェテス
出演: ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク、マシュー・カッセル、マシュー・ラボートー

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[あらすじ] (引用: goo 映画
土木作業の現場監督ニック (ピーター・フォーク) とその妻メイベル (ジーナ・ローランズ)。メイベルは家族や友人に対する強い愛情の念をコントロールできない性格だ。ある日、夫婦 2 人だけで過ごす予定の夜に、突発的な事故でニックが帰宅できなくなったことをきっかけに、メイベルの奇行が目立ち始める。友人に忠告されても、妻の精神異常を認めないニックだったが、自分の愛情がメイベルに伝わらないことに苛立ち、彼女を精神病院に入院させる。半年後、多くの友人や親族を招き、メイベルの退院を迎えようとしたニックだったが、入院前とまったく変化していないメイベルが、必死になって自分を抑制しようとしているのに気づき、皆に帰ってもらい、3 人の子供たちと夫婦だけで、再会の夜を過ごそうとする。ヒステリー状態になったメイベルと家族たちは自分たちの愛情を激しくぶつけ合い、子供たちを寝かしつけ、夫婦 2 人きりになったメイベルの顔には、穏やかな笑顔が蘇るのだった。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


本作は、アメリカのごくごく平凡な中流家庭を背景に、精神のバランスを崩していく主婦とその家族たちの姿を描く人間ドラマである。

複雑な人間模様を描いているわけではなく、ある夫婦がメインとなる家族再生物語。一組の夫婦を社会から切り取って、その社会背景やその時代構造までもが汲み取れるような内容であることに驚く。まるでドキュメンタリーのような冷静な視点さえカメラの向こうから感じられる。

メイベルの精神状態が日に日に悪化していくにつれて、家族たちも翻弄される。夫も子供たちもメイベル自身も、メイベルの不安定な精神状態をどこかで認めたくないのだ。だから感情がぶつかったり摩擦が生まれる。

メイベルに何が起こってそうした精神状態に陥ったのかはわからない。誰にでも、どこにでも起きうる不安定さ。精神と現実との間には、時々どうしようもない、手におえないことが起こるのだろう。精神と現実は、実は微妙なバランスの上に成り立っている。

スタイルや印象は全く異なるのだが、精神が不安定な母親像を描いた作品として、塚本晋也監督の 『KOTOKO』 を少し思い出してしまった。メイベルは KOTOKO のように外側向かって何かを、誰かを傷つけることはなく、内側へ深く深く潜り込んでしまうことができないため、誰もその深みに追いつくことができないのだ。

深く潜り込んだ不安定な精神世界からメイベルを引き上げるのは、メイベル自身であり夫ニックである。この両者の努力が現実を超えていく。拍手喝采で迎えられるような感情劇としての高揚感を得るのではなく、見ている方はただ、壊れそうになる、崩れそうになる夫婦とその家族を静かに見守るスタンスで、心の傷やほころびに薬を塗ってあげたくなるような優しい気持ちになってくる。

映画監督の中にもジョン・カサヴェテスの信奉者は多いと聞く。影響を受けた作品も数多いそうだ。イメージフォーラムで開催されたこの回顧展、本作しか見られなかったのだが、もっとたくさん見ておくのだったと今さらながら後悔...


◆ Pros
- 素晴らしいストーリー構成とドキュメンタリー的視点
- 家族再生物語でありながら、精神と現実のバランス劇
- 人間味あふれるキャスト


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