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[25th TIFF] 『もうひとりの息子』

2012.11.20.Tue.17:07
第 25 回 東京国際映画祭 コンペティション部門
『もうひとりの息子』

原題: Le fils de l'Autre
製作年: 2012 年
製作国: フランス
監督: ロレーヌ・レヴィ
出演: エマニュエル・ドゥヴォス、パスカル・エルベ、ジュール・シトリュク、マハディ・ダハビ、アリン・オマリ、カリファ・ナトゥール

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[あらすじ]
イスラエル軍の入隊検査で、ヨセフは自分が両親の実の息子ではないと知る。ヨセフの実の両親はヨルダン川西岸出身のパレスチナ人であり、出生時、パレスチナとイスラエルの戦闘が激しく病院の手違いによって、両親の実の息子ヤシンと取り違えられてしまっていたのだ。事実を知り、互いの家を行き来するようになるヨセフとヤシン。 2 人は、永年にわたる両地域の対立を乗り越えられるのか。

第 25 回 東京国際映画祭 サクラグランプリ


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


本作は、今年 25 回目を迎えた東京国際映画祭コンペティション部門でサクラグランプリを受賞した作品。イスラエルとパレスチナという対立地域をめぐって、2 人の青年と 2 つの家族がアイデンティティに揺れて、寄り添っていくストーリーとなっている。

レヴィ監督自身はフランス系ユダヤ人だそうで、スタジオ撮りはなくてすべてロケで撮影。それもイスラエルとパレスチナの両方の土地で行われたそうだ。またスタッフは、いずれの地域からも集められ、住民たちもエキストラ参加しているそうだ。

そういう意味では、この映画のストーリーテラーは、この撮影に参加した人々全員ということなのかも知れない。そして、彼らがこの映画でひとつになったことは 「平和」 を求める苦難の道が開けるプロローグなのかも知れない。

出生時に病院の手違いで赤ん坊が取り違えられるという題材は、もう古くからドラマなどで使われてきたものであり、さして目新しさもないが、この作品では 2 つの家族に起こったこの 「驚愕」 の事実から、民族的対立地域に住む人々の心の中を抉り出していく。

イスラエル人だと思っていた自分が、実はその対立民族のパレスチナ人だったという事実。これほど悲劇的なアイディンティティの狂いはないだろう。その家族だって心穏やかなものではない。しかし人と人のつながりというものは、民族対立という歴史だけで縛りつけることができないということが、徐々にわかってくるのだ。わかっているが、現実には逆らえなく、幻想でもあるから皮肉なのだ。

この作品では、ヘブライ語、アラビア語、フランス語、英語が使われている。狭い地域の中で人と人が疎通するのにこれだけの言語が必要なわけである。言葉は民族の象徴、地域の象徴、そしてアイデンティティの象徴でもあり、本作の構成上、非常に重要なエレメントであることがわかる。

イスラエルのテルアビブで育った青年ヨセフが、パレスチナの実の家族とアラビア語の歌を歌う場面があるが、監督いわく、「音楽は政治的な対立を超え、人を結びつける力を持つということを表現したかった」 ということで、あそこに字幕が入らなかったのは、「ヨセフが知らない言語の曲を耳で覚えたという設定だった」からだそうで、なるほどなと思った。

この作品における 2 つの家族は、戸惑いながら躊躇いながら寄り添う姿を見せているが、それゆえに、対立から和解へとそう簡単には進めない重い足どりの道の現実の方が私にははるかに突き刺さってきた。


参照:
TIFF 上映後 Q&A: http://2012.tiff-jp.net/news/ja/?p=12302
TIFF 公式インタビュー: http://2012.tiff-jp.net/news/ja/?p=15363


◆ Pros
- 民族の対立と和解についてのリアリティ溢れる描写
- アイデンティティとは何かを考える


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